coinとは何だったのか?HCEの今後を予測!

2016/02/29
  • 決済代行コラム 業界ウォッチ
 
このテーマは:オンライン・オフライン問わず、クレジットカード業界全般の業界動向について考察します。

 ご無沙汰の國藤です。前回の福浦のエントリでEMVについて触れたので、今一度HCE(ホストカードエミュレーション)について、おさらいの考察をしていきます。なお今回も福浦が編集に大きく貢献しています。

HCE界隈の最新ニュース

 昨年の終わり頃から立て続けに、HCE周辺で面白いニュースがあったのでご紹介します。

「LGから魔法のユニバーサルクレジットカードが近日中にくるかも」

引用元:http://www.gizmodo.jp/2016/02/20160201nlg.html

 韓国の総合家電メーカーLGグループが開発する、1枚でどのクレジットカードにもなる魔法のクレジットカードで「White card」と呼ばれるもののようです。

 まだ詳細が発表されておらず、どのようなサービスなのか大変気になりますが、カード外観から推測するに、恐らくICチップを介したNFC関連の機能があり(EMV対応)、その仕組みがカード盤面にも書かれている「LGpay」で、恐らくApplepayと同じように、イシュアと提携した「ポストペイ式ウォレット」のような位置づけに落ち着くはないかと推測します。

 もう一本、少し前で違う切り口ではありますが

 「あらゆるクレジットカード情報を模倣&ワイヤレス化してしまう驚異のオープンソースデバイス登場」

引用元:http://gigazine.net/news/20151125-magspoof/

 というものがあり、これは磁気テープのデータをテープなしで空間に対して出力してしまう機器のようです。

 オープンソース※という事もあり、個人的には面白い試みだと感じるのですが(※…プログラムなどを誰もが自由に改変し使えるよう公開する事)、残念な事にこの技術を少なくとも日本国内の取引において

クレジットカード決済に
活かす事は難しい

という結論は出ているのだと思います。

 つまり、磁気スワイプ型のクレジットカードのエミュレーション(仮想化)は今後主流には成り得ない、という事です。

 何故なら、この領域について、VISAとMatercardがHCE(Host Card Emulation)を支持するという表明をし、特にVISAは「Visa Readyパートナープログラム」として規格、要件、プログラム承認プロセス、実装ガイドラインまで公開しています。

 NFC(近距離無線通信)を支持するという事は、磁気スワイプ方式のエミュレーション(仮想化)は、支持されていないグレー(ほぼ黒ですね)な方式という事になります。

今一度、HCEについて整理しよう

 従来からAndroid携帯では、セキュアエレメントという「暗号化等で解析や物理攻撃対策がされた半導体製品」に、カード情報を格納するなどして、携帯電話でカード決済をする事を想定した「カードエミュレーションモード」という機能がありました。
セキュアエレメントを使った、カードエミュレーション
 しかし、端末のメーカー毎に仕様がバラバラである事などから、現在では主流ではなくなってきているようです。

 その後に生まれたのがHCEで、こちらはセキュアエレメントではなく、クラウド上でカード情報を管理する仕組みです。
ホストカードエミュレーション

※表の引用元:Host-based Card Emulation(Android)
なお表内ではクラウド側の管理システムが省略されています。

 これらを踏まえた上で、冒頭のニュースで出た「LGpayのWhite card」発表の随分前からあった「coin」「Plastc」「SWYPE」といった「カードをまとめて、磁気出力することでエミュレーション(仮想化)するガジェット」の今後を考察してみたいと思います。

1. coinとは何だったのか

 おそらくこの領域で最初に発表された事で注目を集め、自社サイトでのクラウドファンディングで資金を調達して流通することになったのが「coin」です。

 予約の開始は2013年11月、本来の発送予定は2014年夏のところ2015年春(4月と仮定)に延期と、実に15ヶ月もかけてようやく購入者の手元に届いたようです。

 しかし現在NCFには対応しておらず、対応予定も発表されていません。

 奇しくもその間に、EMVとライアビリティシフトの発表があり、少なくとも日本では「使えないデバイス」になってしまった感があります。実際のところ、カードの登録には住所確認があり、日本で発行されたクレジットカードの登録もできない模様です。となると…

磁気式ポイントカードを
一枚にまとめる

 程度しか、用途がなくなってしまったと言えるでしょう。

3/4追記
coinはMastercardと提携してウェアラブル決済を提供していく方針を発表していました。こちらは当面需要がありそうです。相変わらずスマートフォン単体でのNFC本格化が脅威ではありますが、うまく普及すれば面白そうですね。

 

リリース原文:http://newsroom.mastercard.com/press-releases/mastercard-and-coin-sign-agreement-to-power-wearable-payments/

2. SWYPとPlastcはどうなる?

 遅れて発表された、SWYPやPlastcは「技術的には」NFC及びEMV対応可能と謳っています。なんとも歯切れの悪い言葉の通り、現段階ではNFC利用もカードブランドの認定・認証も受けていません。

 認定・認証には相応のコストもかかる筈で、プラットフォーマーでもない「いちベンチャー企業」には荷が重いのではないか、という印象です。

 どこかのプラットフォーマーに買収されるシナリオもありそうなものですが、既に主要プラットフォーマーはHCE方式でのサービスを始めていたり、発表していたりで、良い着地点が見えてきそうにありません。

 当時は面白いプロダクトで注目を集めていましたが、今となっては厳しいところに来てしまっているのではないでしょうか。

なお、開示情報が少なく困難なため、編集部ではこれらのツールが本当にクラウド型のHCE要件を満たしているかどうかの精査はしておりません。

3. HCEの今後の担い手は誰か?

ここまで書いてきた通り、従来あったツールは
・クレジットカードとして使えない
・ポイントカードはモバイルアプリでもできる
・連動するスマートフォン側がより良い機能(HCE)を持っている

と、まさにスマートフォンとそのプラットフォーマーに飲み込まれてしまった格好です。

 プラットフォーマー、つまりモバイルOSを作っているGoogleやMicrosoft、OSとハードウェアを一緒に作っているAppleに完封されてしまったのでは、消費者としてもわざわざ今後が心配なこれらのガジェットを買って、使い続ける理由が見いだせないのが普通です。何しろスマートフォンがポケットの中に陣取っていますから。

 そして、HCEという仕組みや技術そのものも、今後は「決済業界の内部的な話」でしかなくなり、注目されることはなくなってくるのではないかと、私は考えています。

新しいものに飛びつくリスク

 米国のkickstarterを筆頭に、日本国内でもクラウドファンディングサイトがいくつも立ち上がり、面白いプロダクトが世に出る機会が増えたことは、長年インターネット界隈で仕事をしている身としては大変喜ばしい事だと思っています。

 しかし一方では「発売が遅れ、消費者に届いたら既に時代遅れ」という悲しい事例も、特にハードウェア業界ではよくある話であるように感じます。

 仮に前述の「coin」を私が買っていたとしたら、かなりの落胆と怒りを感じていたことでしょう。器が小さく、クラウドファンディングに一番向かないタイプですね。私。(苦笑)

面白い話こそ慎重に!

 我々もいわゆる「IT業界」の端くれなので、「最新の技術」とか「イケてるガジェット」の話がよく飛び交うのですが、それらを賞賛するばかりでなく、敢えて批判的な視点も持っておいたり、その業界のパワーバランスなども考慮して、慎重に行く末を見定めていく事が、今後の事業展開のアイデアを練る上で重要なのかもしれません。

 お店を経営されている方が、このような「新しい技術」に飛びつくと、金銭的にも現場の労力的にも「無駄な消耗」をしてしまう恐れがあります。

 大胆な変更をお考えの際には、当社のような「ややレガシーなサービスの担い手」に相談する事で、より良い判断をいただけるかもしれません。その際はどうぞご気軽にお声がけ下さい。

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